【ハリネズミのふらつき症候群】海外論文を読んで分かったこと

ハリネズミを飼うならば知っておきたい病気の1つです。

 

最近ペットとして人気のハリネズミですが、日本ではハリネズミの病気に関する研究はまだまだ進んでいません。

それは、ふらつき症候群(WHS)についても同様で、症状や発症年齢、治療方法などは獣医さんでも知らない場合があります。

 

一方、海外では日本よりも先にハリネズミがペットとして飼われてきたため、ハリネズミの病気に関する研究の歴史は日本よりも長いです。

ですので、ハリネズミの病気に関して、海外の情報を参考にするのが良いでしょう。

 

今回は、ふらつき症候群(WHS)に関する海外論文を読みました。
元の論文は英語なのですが、少しでも多くのハリネズミ飼いさんと情報を共有したいので、内容を日本語でまとめました。


読んだのは、「Wobbly Hedgehog Syndrome in African Pygmy Hedgehogs」という論文。

2006年にJournal of Exotic Pet Medicine に掲載されたものです。

 

この記事はこんな人におすすめ

  • ハリネズミのふらつき症候群について詳しく知りたい
  • ふらつき症候群の新しい情報を知りたい

 

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コラム『ハリネズミのふらつき症候群、安楽死について考える』

 

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ハリネズミのふらつき症候群(WHS)とは?

 

 

ハリネズミのふらつき症候群(WHS)とは、後ろ足が麻痺するような症状が出て、やがて全身に麻痺が広がってごはんが食べられなくなる病気です。

 

治療法がなく、発症したら進行の差はあれど、治癒することはないと言われています。
そのため、北アメリカではふらつき症候群の症状が見られたら、ほとんどの飼い主が発症したハリネズミの安楽死を望むそうです。

 

ふらつき症候群に類似した症状の報告は、1990年代からあります。

また、アフリカハリネズミだけでなく、ヨーロッパハリネズミでも報告されています。

 

発症に性差があるとのエビデンス(根拠)はないそうです。

 

ハリネズミのふらつき症候群(WHS)の研究概要

 

この研究は、2000-2005年北アメリカのペットのアフリカハリネズミのうちふらつき症候群(WHS)と診断された676匹(全数の約10%)で実施されました。


そのうち、45症例は解剖が行われましたが、その内5症例は脳腫瘍などの別の病気であったため、今回の報告では省かれています。

その5症例を除いた40症例(オス18匹、メス22匹)で病理学的調査(解剖調査)を行われています。

 

その他、症状や治療経過などを調査しています。

 

ハリネズミのふらつき症候群(WHS)の研究結果

 
この研究で得られた情報についてまとめていきます。

臨床症状

 

ごく初期:丸まれなくなる

初期  :筋運動の調律欠如(ふらつき)

数か月後:傾斜、眼球突出、震え、自傷行為、体温維持できなくなる

 

Point

・初期症状は、一時的に良くなったり悪くなったりを繰り返す
初期症状が起こるのは、平均で18.5ヶ月(ただし、発症例は1〜36ヶ月と幅広い)
運動失調の開始から9ヶ月で症例の60%が、15ヶ月で90%が完全に動けなくなった
・症例の70%で麻痺は後肢から前肢へ上がっていった

・症状が現れ始めた年齢と進行速度に相互関係はない

 

ふらつき症候群の肉眼的所見

 

外観

・平均体重は200-300gと筋萎縮によりひどく痩せていた
・麻痺により、手足を引きずることで先端部の磨耗が見られるものもいた
 

解剖学的初見

肝臓: わずかに肥大、色が薄くなる

腎臓: 表面がザラザラして凹凸あり

 

*その他の臓器で肉眼的所見は認められない

 

病理学的所見


初期:大脳、小脳、脳幹から脊髄に至るまでの白質の空胞変性骨格筋の筋原性萎縮

その後:ミエリンの欠損、神経変性、脊髄前角の下位運動ニューロンの変性と欠損

 
今回解剖されたうちの2症例では臨床症状がなかったが、家族性を疑われて解剖された。
その結果、臨床症状のあった症例と同様の病理学的所見がみられた。
 
その他に、およそ20%で軽度から重度の肝リピドーシスがあった。
これもハリネズミ特有の疾患の可能性がある。
 

ふらつき症候群の治療

主に行われた治療方法
・補充療法(ビタミンE、ビタミンB、セレンなど)
・経口プレドニゾロン
・ホメオパシーのレメディー
・鍼療法
・理学療法
・食事療法
 
Point

ふらつき症候群(WHS)は寛解と再発を繰り返す疾患である。

 

つまり、治療によって良くなったように見えたとしても、本当に治療による改善なのか、病気の寛解時期なのかは証明することが出来ない。

 

また、食事療法、治療法、支持療法と進行速度との相互関係はなかった
 
Avonox療法も試みられたが、治療開始後12週で酷い衰弱状態となる。
現在、病気の進行を止める治療法はない。
 

ふらつき症候群(WHS)の研究考察

 

中枢神経系の白質損傷を起こす原因疾患には以下のものがあります。

・後天性疾患(自己免疫疾患や感染症)
・遺伝性疾患

 

後天性疾患の感染症が原因だとすると、感染因子が存在するはずです。

しかし、感染因子が見つかったという根拠はありません。

 

今回の研究では、家族性傾向がみられたため、遺伝性疾患である可能性も高いです。

感染性因子が垂直感染(母子感染)した可能性も考えられますが、もしそうだとしたら症状が現れ始めるのに1~3年かかるというのは、病原体の潜伏期としては長すぎます。

 

ふらつき症候群(WHS)に関する論文を読んでみて

 

解剖所見をみると、やはり神経系の異常のようです。

症状はなかったけど、家族性を疑って解剖された症例でも同様の異常が認められた点から考えると遺伝性である可能性が高そうです。

つまり、ある遺伝子(単一ではなく複数かもしれませんが)がふらつき症候群の原因となっていて、それが親から子へと受け継がれることによって広がっている可能性が高いということです。

症状として、人間でいう「筋ジストロフィー」に似ている気がします。

 

感染性疾患だとすると、症状の発症に時間がかかるものもあるので、一概に発症までに時間があるから垂直感染を否定できないと思いました。

クロイツフェルト・ヤコブ病のような蛋白質性の感染症である可能性も、否定できないのではないでしょうか?

 

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ハリネズミのふらつき症候群の海外論文を読んでみた まとめ

 

今回、初めてハリネズミのふらつき症候群に関する論文を読んでみて、新しく知ることが多くありました。日本語のサイトなどで調べても載っていないことばかりです。

 

ハリネズミの飼い主にできることは多くありません。

論文にもあったとおり、栄養的な要因も考えられますので、まずは日々のごはんから改善すると良いでしょう。

 

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やはり、日本ではハリネズミの疾患についてまだまだ遅れていると実感すると共に、海外ではハリネズミの研究が進んでいるということが分かりました。

 

最新の情報を知りたいのなら、海外論文を読んでみることをおすすめします。

論文はもちろん英語ですが、難しい文法などはなく、単語さえ調べればすんなりと読むことが出来ますよ。また、最近はGoogle翻訳など、自動翻訳機能の能力も上がっているので、英語が苦手という方はそういったツールを利用してみてはいかがでしょうか?

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