ペットとして飼育されるカエルのなかでも、比較的飼育しやすいと言われるツノガエル。とはいえ、飼育に適した温度や餌、床材を知らないと長生きさせてあげられないかもしれません。
この記事では、ツノガエルの種類や飼育方法、どこで買えるかを解説します。
ツノガエルの種類
ツノガエルはユビナガガエル科に分類されるカエルの一種で、主にツノガエル属やチャコガエル属に属しています。ユビナガガエル科とされているカエルは約800種いるとされていますが、日本で流通するツノガエルは主に以下のとおりです。
- クランウェルツノガエル
- ベルツノガエル
- ブラジルツノガエル
- アマゾンツノガエル
- カーティンガツノガエル
- ホオコケツノガエル
- チャコガエル
まずは、ペットとして飼育できるツノガエルの生息地やサイズについて解説します。
クランウェルツノガエル
体長 | 7.5〜12cm |
生息地 | パラグアイ、ボリビア、ブラジル |
クランウェルつのガルはツノガエルの中で最も流通量が多く、品種改良が進んでいる種類です。一方で、WC個体(野生採取個体)はほとんど出回りません。
CB個体(繁殖個体)はグリーン、イエロー、レッド、ブルーなどさまざまな体色がブリードされています。グリーン個体をペパーミントやグリーンアップル、アルビノ個体をストロベリーやレモン、ライムグリーンなど体色に合わせてさまざまな名前で呼ぶことがあります。
一般的には、体色による飼育難易度は変わりませんが、ミュータントとも呼ばれる色彩変異個体は先天的奇形などを持つことがあるため、初めてのツノガエル飼育にはおすすめできません。
ベルツノガエル
体長 | 10〜12cm |
生息地 | パラグアイ、ウルグアイ、ブラジル南部 |
ベルツノガエルの口先や手足は短く、体型は丸みを帯びていることが特徴です。WC個体が流通することはほとんどありませんが、クランウェルツノガエルほど品種改良は進んでいません。そのため、体色はグリーンがベースで背中の斑点に赤色が入る個体が一般的です。
クランウェルツノガエルの人気に押されているためか、ここ数年で日本国内での流通量が減ってきているように感じます。
ブラジルツノガエル
体長 | 18〜20cm |
生息地 | ブラジル東部 |
ブラジルツノガエルは南米原産のツノガエル属のなかでも最大種と言われており、最大で20cm程度にまで成長します。ただし、飼育下で20cmまで成長するかは不明で(私も見たことがありません)す。クランウェルツノガエルとの交雑種も混じっているようで、大きく育てるには遺伝的要因と餌や飼育環境などの環境要因が重要でしょう。
流通量が少ないため、入手しにくいツノガエルの一種とも言えます。
アマゾンツノガエル

体長 | 6.5〜12cm |
生息地 | 南米大陸の北部 |
アマゾンツノガエルはクランウェルツノガエルやベルツノガエルと比較し、ツノが大きく口元が尖っていることが特徴です。WC個体は稀に流通しますが、CB個体よりも高価になるケースもあります。
WC個体の体色は多くが褐色ですが、CB個体はグリーンやオレンジといった体色のものも販売されています。ベビーサイズの個体は比較的流通しやすいですが、ヤング〜アダルト個体はほとんど流通しません。
カーティンガツノガエル
体長 | 7〜10cm |
生息地 | ブラジル北東部 |
カーティンガツノガエルは他のツノガエルとは異なり、乾燥した森林地帯に生息します。乾季は土に潜って休眠状態になるため、飼育環境を整えるときはソイルや土などを床材に選ぶとよいでしょう。
流通するのはCB個体がほとんどですが、クランウェルツノガエルのように品種改良は進んでいません。
ホオコケツノガエル
体長 | 約8cm |
生息地 | エクアドル、ペルー |
ホオコケツノガエルは他のツノガエルと比べて小型で、特徴であるツノも短くなっています。名前のとおり、頬がこけたように凹んでいるのが特徴です。
カーティンガツノガエルほど乾燥した地域のツノガエルではありませんが、地中に潜って過ごすことを好むため、床材は潜れるタイプのものを使用するとよいでしょう。
チャコガエル
体長 | 約5cm |
生息地 | アルゼンチン、ボリビア |
チャコガエルは、チャコガエル属のカエルです。ツノガエル属ではないためツノはなく、体表にイボは見られません。
こちらも乾燥した地域に生息している種のため、床材選びの際は注意が必要です。また、ベビーの飼育は難しいとされており、初めて飼うカエルとしてベビーサイズのチャコガエルは避けた方がよいかもしれません。
ハイブリッド種
上記以外に、ハイブリッド(交雑種)として次のような種類も販売されています。
ハイブリッド名 | 親個体の種名 | |
ファンタジーツノガエル | クランウェルツノガエル | アマゾンツノガエル |
アルティメットツノガエル | ブラジルツノガエル | アマゾンツノガエル |
ベルゾンツノガエル | ベルツノガエル | アマゾンツノガエル |
クラジェットガエル | クランウェルツノガエル | バジェットガエル |
ハイブリッド種を飼育することに問題はありません。しかし、本来まったく異なる環境に生息しているツノガエルを掛け合わせることで、適切な飼育方法が確立しにくい難点があります。
初めてツノガエルを飼うのであれば、できればハイブリッド種は避けた方が無難かもしれません。
ツノガエルの寿命や病気
ツノガエルを飼育するにあたり、寿命やかかりやすい病気を知っておきましょう。
ツノガエルの寿命は10年以上
ツノガエルの寿命は10年以上と言われていますが、飼育下では5〜10年が平均的とされています。
飼育下で寿命が短くなる理由として、餌の与え過ぎによる肥満や過度な品種改良が挙げられます。後述しますが、ツノガエルを含めてカエル全般は餌の頻度や量によって亡くなるリスクがあることを知っておくとよいでしょう。
ツノガエルがかかりやすい病気
ツノガエルがかかりやすい病気は、主に以下のとおりです。
病気 | 原因 | 対策 |
皮膚病 | 外傷、不衛生な環境、脱皮不全 | 水が汚れていなくても、定期的に掃除する |
ガスだまり | 餌の与えすぎによる消化不良 | 人工餌を与える場合は餌の頻度と量に注意 |
アンモニア中毒 | 不衛生な環境 | 水が汚れていなくても定期的に掃除する |
特にツノガエルに起こりやすい皮膚病として、レッドレッグ(赤肢病)があります。レッドレッグになると、お腹や足の裏側が赤く充血し、重症になると出血したり潰瘍ができたりします。
軽症の場合、抗生剤の投与や薬浴で改善する可能性がありますが、重症になってからの完治は難しく、命を落としやすい病気です。
ツノガエルの飼育に必要な用品

ツノガエルの飼育に必要な用品は、以下のとおりです。
- ケージ
- 床材
- ピンセット
- 餌
- 保温器具
それぞれについて、詳しく解説していきます。
ツノガエル飼育に適したケージ
ツノガエルは餌を待ち伏せ、目の前に来たときに飛びついて捕獲するタイプのカエルです。そのため、普段は土の中に潜って身を潜めていることが多く、活発に動くカエルではありません。
とはいえ、身動きしにくい環境は不適切ですので、最低でも体の3倍程度の広さがあるケージが必要です。また、ジャンプ力があるため天井が低いと頭や口をぶつけて傷になり、そこから細菌感染を起こすリスクがあるため、あまりにも高さが低いケージは避けましょう。
多くのツノガエルは湿度を好むため、ケージ内に水を張ったり霧吹きで湿度を上げたりする必要があります。そのため、水漏れしないタイプのケージが必要です。
プラケース
ツノガエル飼育で一般的に使用されるのが、昆虫用のプラケースです。軽くてメンテナンスしやすく、ツノガエルの成長に合わせて買い替えやすいことが特徴です。
一方で、傷がつきやすく側面が曇ってケージ内を観察しにくくなりやすいデメリットもあります。
ガラスケージ
ケージ内をレイアウトして飼育したいなら、ガラスケージがおすすめです。
重さがあるため持ち運びにくいデメリットはありますが、プラスチック製より長く使えることがメリットです。ガラスケージの中には水を張れないタイプのものもあるため、購入前に商品説明をきちんとチェックしましょう。
ツノガエル飼育に適した床材
ツノガエルは土に潜って獲物を待つカエルのため、体を隠せるような床材を選んであげましょう。ただし、ベビーときは誤食を防ぐために、キッチンペーパーや熱帯魚用ろ過マットを使うのも一つの方法です。
キッチンペーパーは水換えの度に交換し、ろ過マットは洗って再利用して汚れたら新しいものに交換します。
特に乾燥地帯に住むツノガエルは、土やソイルを床材に選ぶのがおすすめです。ソイルとは、土を固めた床材で、商品によっては消臭効果を持つものもあります。
赤玉土を選ぶときは、粒の大きさに注意しましょう。ツノガエルが潜りやすい小粒がおすすめです。
ピンセット
ツノガエルに餌をあげるときは、ピンセットを使用します。餌と間違えて噛まれてしまうと、ツノガエルの大きさによってはケガのリスクがあるためです。10cm程度のツノガエルに噛まれた場合、歯形がついてしまったり血が出て腫れたりすることもあります。
ピンセットの先端が尖っていると、ツノガエルが口の中にケガしてしまう恐れもあるため、先端部分が尖りすぎていないピンセットを選ぶのがおすすめです。
ツノガエルの餌
ツノガエルの餌には、大きく分けて昆虫や魚、人工餌があります。昆虫や魚はそれぞれ活き餌・冷凍餌があり、ツノガエルの好みによって選択します。
人工餌
ツノガエル用の人工餌には、水でふやかすペレットタイプや粉末を水にとく練り餌があります。ツノガエルが好む魚粉を使用している商品も多く、嗜好性が良いため食いつきも問題ありません。
しかし、人工餌にはつなぎとして小麦粉などの穀物やでんぷん粉が含まれており、これらが胃や腸の中で膨らみガスだまりを引き起こす可能性があります。人工餌をあげる際は、目と目の間くらいの大きさに練った餌をヤング〜アダルト個体なら1週間に1回、ベビー個体なら2回に抑えるなど工夫が必要です。
また、人工餌に餌付いていない個体もいるため、ツノガエルをお迎えする前にペットショップスタッフに与えている餌の種類を聞いておきましょう。
昆虫
野生下で昆虫を食べているツノガエルも多いため、人工餌を食べない個体に与えると効果的なケースもあります。さまざまな餌昆虫が販売されていますが、コオロギが栄養価や安全性も含めておすすめです。
ミルワームは噛む力や生命力が強いため、餌を丸呑みするツノガエルに与えるとワームが口内や胃腸を齧ってしまう可能性があり危険です。生きたコオロギを与えるときも、頭を潰しておくと安心でしょう。
ツノガエルは目の前で動くものに反応するため、冷凍コオロギにも反応します。
魚類
ツノガエルは小魚を食べることも多く、特にアマゾンツノガエルのWC個体は生きた小赤しか食べないことも多々あります。魚類は人工餌のようにガスだまりを起こす危険もなく、消化もよいため消化不良を起こしにくいことがメリットです。
生きたメダカや小赤を準備するのは手間がかかるため、ピンセットから食べる個体であれば冷凍ドジョウがおすすめです。1匹まるごと与えると大きい場合は、口に入るサイズに切って与えます。
冷凍マウス
冷凍マウスは栄養価が高くカルシウムも豊富なため、ツノガエルを大きく育てたいときにおすすめの餌です。ただし脂質も多いため、アダルトサイズのツノガエルに与える場合は2週間に1回の頻度でも十分でしょう。
我が家のアマゾンツノガエルには、5cm程度のヤングサイズまではピンクマウス、アダルトサイズには冷凍ドジョウを与えています。
ツノガエルに保温器具は必要?
ツノガエルの飼育に適した温度は25℃前後で、30℃を超えると暑すぎて亡くなるリスクがあります。また、20℃を下回ると餌を食べなくなり、休眠状態になってしまいます。ツノガエルが生息する南米では、最低気温が20℃を下回ることもあり、種類によっては冬眠のような状態になることもあるようです。
しかし、飼育下であえて休眠させるのはリスクが伴うため、冬場はパネルヒーターなどの保温器具で25℃前後の環境を作ってあげることをおすすめします。
パネルヒーターを使用する際は、ケージの底面1/2〜1/3程度に当たるように設置します。
ツノガエルはどこで買える?
ツノガエルはペットショップや爬虫類イベント、通販で購入できます。カエルやイモリといった両生類の販売に資格は不要なため、ヤフーオークションなどの販売プラットフォームを通して個人ブリーダーから購入することも可能です。
ただし、個人間の取引は輸送による死着などのトラブルに発展するケースもあるため、通販を選ぶ場合は保証のあるショップを探しましょう。おすすめは、チャームさんやBears Frogさんです。
ツノガエルは飼育しやすいカエル!ただし準備は万全に!
クランウェルツノガエルやベルツノガエルは、飼育しやすいカエルです。ただし、チャコガエルやホオコケツノガエルは環境づくりや餌付けに苦労するケースもあります。
飼育しやすいといっても、ツノガエルは高温に弱く消化不良を起こしやすいため、飼育環境はしっかり整えてあげましょう。